研究概要 |
人血中アポリポ蛋白E(アポE)のレセプター結合ドメイン部(アミノ酸配列140-160番)内のDNA点変異をスクリーニング的に見つける目的で,polyme rase chain reaction(PCR)とGCクランプ法を用いた変性密度勾配電気泳動法を確立した。本方法は全血200ulよりゲノムDNAを抽出し,アポEのエクソン4に存在するレセプター結合ドメイン部を,GCの塩基配列を付加したプライマーでPCR法にて増幅し,65-85%の変性密度勾配をかけたポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なうものである。本法でアポEのisoformであるアポE2,3,4のDNAフラグメントが全て識別可能であった。また,本法により高脂血症の50症例を検討した結果,既に報告しているアポE-Kochiと同じ変異種が発見され,患者の家族調査の結果,父親に同様の異常を認めた。本患者のアポEは145番目のarginine codon(CGC)がhistidine(CTC)に変異していることを確認した。アポEの同ドメイン部の変異のスクリーニングのため,さらに,single stand conformation polymorphism(SSCP)解析法を新たに開発した。本法はゲノムDNAから同ドメイン部DNA断片をPCRで増幅し,これをNaOH変性後,ポリアクリルアミドゲルにて泳動し,エチジウムブロマイドで染色するものである。本方法でもアポEの各isoformのDNAが明確に区別でき,上記,アポEの変異種も同定できた。本SSCPは短時間で結果が分かること,非アイソトープ法であることなど有益な点が多い。以上の方法はいずれもアポE変異種のスクリーニングにすぐれた方法であり,今後,これらの方法を用いてアポEの変異種が原因となる高脂血症の症例を集積していく。
|