研究概要 |
ラット腎乳頭部集合尿細管細胞におけるアルギニンバゾプレミン(AVP)の作用発現に対するカルシウム,ナトリウム,pHの役割を検討した。これまで,私たちは同集合尿細管細胞においてAVPが細胞内情報伝達物質cAMPと細胞内遊離Ca([Ca^<2+>]i)を動員すること,[Ca^<2+>]iがAVPによるcAMP産生に重要な修飾因子となることを明らかにしてきた。今回の研究では,(1)AVPによる細胞内情報伝達関質賦活に及ぼすNaの役割を検討するため,Na^+除去培地・amilorideを用いて実験した。Na除去培地下では,AVPによるcAMP産生は有意に抑えられたが[Ca^<2+>]i動員は影響を受けなかった。Na除去培地下では細胞内Na濃度及び細胞内pH(pHi)は有意に低下した。HCO_3存在下でNaを除去すると,細胞内Na濃度は低下するがpHiは変化せず,AVPによるcAMP産生も正常に認められた。amilorideにより細胞内Na・pHiは用量依存性に低下し,AVPによるcAMP産生も同様に抑制された。(2)細胞外液pH(pHe)を6.8〜8.0にするとpHiは6.94〜7.27に分布した。AVPによるcAMP産生・[Ca^<2+>]i動員は低pHi下で抑制され,高pHi下で増強された。3HーAVPレセプタ-結合は低pHi下で抑えられた。またpHiのみをCCCPやAcetale bufferで低下させると,AVPによるcAMP産生及び[Ca^<2+>]i動員は有意に抑制された。 ^3HーAVPレセプタ-結合は影響されなかった。AVPに対する細胞の反応性はpHi値と正の相関を示した。これらの成績は,pHiがAVPに対する細胞の反応性を規定する重要な因子であることを示唆している。(3)60mMKCIはAVPによるcAMP産生を有意に増強した。60mMKCIは[Ca^<2+>]iを増加させるとともに,細胞内NaーpHiも上昇させた。私たちはすでにこれらの変化がいずれもAVPによるcAMP産生を増強することを明らかにしており,60mMKCIの作用は多因子的であると考えられた。以 上の如く,本年度の研究計画に沿って,AVPによるcAMP産生,[Ca^<2+>]i動員に対する細胞内外pH,細胞内Naおよび高濃度Kclの効果を明らかにした。
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