研究概要 |
genisteinは,チロシン燐酸化酵素(チロシンキナーゼ)としてよく使用されるが,我々の検討では血小板チロシンリン酸化の抑制作用はなかった。genisteinの血小板機能抑制作用は,イノシトール燐脂質代謝阻害によることを明らかにしたが,この効果はチロシンリン酸化とは直接関係がない可能性がある。一方,チロシンキナーゼ阻害剤として有効な物質として,protein kinase C阻害剤であるstaurosporineをみいだした。staurosporineは,wheat germ agglutininによる血小板活性化,チロシンリン酸化を強力に抑制したことより,この刺激剤による血小板活性化にはチロシンリン酸化の関与が大きいと考えられた。 我々は,血小板チロシン燐酸化蛋白を鋭敏に検出する系を開発し,種々の血小板活性化物質によるチロシン燐酸化蛋白の発現を検討してきた。チロシン燐酸化をうける一群の蛋白は,トロンビンを始めとしほとんどの刺激剤で同様であり,個々の血小板活性化物質に特異的なパターンはこれまで発見できなかった。チロシン燐酸化は,他の細胞系において細胞接着に関わる刺激伝達系のシグナルとして働くことが明らかにされてきたため,我々は血小板において粘着反応が最初のシグナルとなるリストセチン凝集におけるチロシン燐酸化を判定した。その結果,リストセチンによる血小板凝集により64kDaの分子量の蛋白が特異的にチロシン燐酸化をうけることを見いだした。リストセチンによる血小板凝集は,血小板糖蛋白Glycoprotein Ib(GPIb)及びvon Willebrand因子(vWF)を介しておきる。そこで,vWFの活性型またvWFを特異的に活性化させるbotrocetinを用いて同様な検討を行った結果,GPIb及びvWFの結合が64kDaの分子量の血小板蛋白のチロシン燐酸化を起こすことを確認した。
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