研究概要 |
初期応答遺伝子junB,TISll転写活性化に至るILー6初期シグナル機序を解明するため、マウスjunB遺伝子プロモ-タ-に存在するILー6応答領域を決定し、その活性化機序を検討した。junB遺伝子プロモ-タ-のILー6応答領域をHepG細胞においてCATアッセイ、ゲルシフト法にて解析したところ、JunB遺伝子上流ー149〜ー125bpに早期ILー6応答を担う領域を見いだした。この領域(JunB ILー6IRE)には、cーEts結合部位(TCA GGAAGC)、CRE類似部位(GTGACGCGA)が存在するが、ILー6応答には両部位の存在が必須であることを明かにした。Cキナ-ゼやHーras,cーrafー1は、同領域には作用せず、ILー6やILー1による肝の急性期蛋白遺伝子活性化に関わるNFILー6もJunB ILー6 IREを活性化しない。またILー6のJunB ILー6 IRE活性化は阻害剤H7により抑制される。ILー6と相乗効果を示すcAMPは、CRE類似部位にのみ作用することなどから、ILーシグナルの標的分子は、cーEts結合部位結合蛋白と考えられた。競合阻害実験を含むゲルシフトアッセイにより、JunB LIー6 IREのEts部位には、Etsファミリ-の蛋白、あるいは同様の特異性を持つ蛋白が、CRE類似部にはCREB/ATFファミリ-、CREBP1/Junなどが結合することが知られた。実際、ETS1,CREBP1,Junは、各々単独でJunB ILー6 IREを活性化するが、三者を共に発現させると非常に強い作用を示した。以上より、ILー6シグナルは、ras,rafの経路とは独立に、PKC,PKA,Ca/CM依存性キナ-ゼなどとは異なるH7感受性キナ-ゼを用いてJunB遺伝子上流のILー6応答領域JunB ILー6 IREを活性化すると考えられる。今後ILー6シグナルの核内における標的分子の同定、および活性化機序の解明へ向けて研究を進める。
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