研究概要 |
本研究の目的は多発性骨髄腫においてそのオートクライン増殖因子であるIL-6の恒常的発現の機序を明らかにすることである。まず骨髄腫細胞におけるIL-6遺伝子のプロモーター領域の転写誘導活性を検討するためにヒトIL-6遺伝子の5'上流約1kbまでの長さのDNA断片をクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子の上流に組み込んだCATプラスミドを作成した。これをリポゾーム法により骨髄腫細胞株に導入したところCAT遺伝子の発現を認めた。このことから骨髄腫細胞においてIL-6遺伝子の5'上流のプロモーター領域の転写誘導活性を確認することができた。 一方,ヒト神経芽細胞腫株SK-MG4においては転写活性化因子NF-IL6がIL-6遺伝子プロモーターの特定の塩基配列に結合することによりIL-6遺伝子の転写を活性化することが明らかにされている。我々は骨髄腫細胞におけるIL-6恒常的発現へのNF-IL6の関与の有無を明らかにする目的で骨髄腫細胞におけるIL-6とNF-IL6のmRNAの発現をRT-PCR法を用いて検討した。ヒト骨髄腫細胞株KMS-5とU266および新鮮分離骨髄腫細胞において,IL-6とともにNF-IL6 mRNAの発現を認め,その量はPHAとTPAで剌激した末梢血単核球と同等またはそれ以上と思われた。さらにNF-IL6結合領域の塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドをプローブとしてゲル・シフト・アッセイをおこない,前記の骨髄腫細胞株や新鮮分離骨髄腫細胞においてNF-IL6蛋白質の発現も確認することができた。NF-IL6mRNAは正常組織では発現しておらずLPSなどの剌激により一過性にその発現が誘導される。骨髄腫細胞においてはそのmRNAが恒常的に強く発現しており,その蛋白質も発現していることから骨髄腫細胞におけるIL-6恒常的発現にNF-IL6が関与している可能性が強く示唆された。
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