研究概要 |
マウス長期骨髄培養系,樹立支持細胞を用いた骨髄細胞との共培養系,を確立し,造血調節機構の解析を進めた。マウス長期骨髄培養では,付着性細胞層に類円形細胞集団から構成される造血巣が形成される。この造血巣での造血現象を細胞接着因子,細胞外マトリックスの構造と機能,種々の造血因子,増殖抑制因子などの液性因子の関与に焦点をあて解析する上で実験系の単純化を計るため,マウス骨髄由来の間質系造血支持細胞株を数種樹立した。樹立支持細胞には細胞外マトリックスとして,tenascin,fibronectin,laminin,collagenの定常的発現が見られた.この細胞上にマウス骨髄から精製した非付着性細胞を播種すると,数日のうちに造血巣が出門し,血球成分の産生が観察された.この血球産生は,培養条件の違いにより時徴的変化を示した。即ちDexter培養系では,主として骨髄球系細胞の産生が,WhitlockーWitte培養系では,リンパ球,マクロファ-ジ系細胞の産生が誘導された.細胞外マトリックスの発現は,Witte系に比べ,Dexter系で有意に減少を示したが,構成成分には大きな差異はなかった.これらの培養条件で,支持細胞の各種増殖因子の発現をノザンブロット法で検討した結果,Steel Factorの発現に差はなかったが,Witte系でILー7,Dexter系ではMーCSFの発現が有意に高いことがわかった.造血支持能の差異を制御する要因についてさらに細胞間接触,造血因子の局所での作用等に焦点をあて解析を進めている.一方骨髄長期培養系では造血を盛んに行なっている造血巣と,造血細胞の産生が認められない造血巣が存在することが半固形培地を用いた新たな培養法により明かとなった.造血幹細胞の維持,自己複製,増殖分化の調節機構を探究するうえで重要な知見であり,造血巣局所における造血調節因子の局在を明確にし,支持細胞・造血幹細胞間の情報伝達機構を追求するため,現在in situ hybridizationの技法をもちいて解析を進めている.
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