研究概要 |
観測値あるいは仮定した線型モデルの誤差間に相関がない場合の一部実施要因計画においては直交計画の最適性がよく知られている。ここでは仮定した線型モデルの誤差間に実験の類似度による相関が生じる場合の直交実験の最適性について議論した。本研究では,実験の類似度を実験の水準組合せのハミング距離によって測り,誤差の相関はそのハミング距離のみによって決まるという共分散構造を仮定し,この共分散構造のもとで主効果の推定の通常の最小二乗推定(OLSE)を用いた場合に,用いる直交配列によってその最適性にどのような差異が生じるかを調べ,ハミング距離d以下の実験間では誤差間に相関が生じ,dを越える場合には無相関となる共分散構造については,計画行列の各行を符号語と見なした時の最小距離がd+1以上の直交配列が存在すればその直交配列はすべての直交配列の中で,weakly universally op-timumであるという結果が得られた。また,共分散構造が明確にわかっている時に,一般化最小二乗推定(GLSE)を用いる際の線型直交配列の最適性についても調べ,線型直交配列を用いた場合にはOLSE,GLSEのいずれの場合にも主効果の推定量の分散共分散行列は対角行列となり,それらは一致することが示された。更に,この結果を用いて線型直交配列を用いる際に,その各行の最小距離が大きい行列が,いくつかの共分散構造に関して最適であるという結果を得た。 これらの結果をもとにして,直交配列の構成法やその推定法がわかりやすい対話型の要因計画エキスパートシステムの作成を試みているが,その試作については現在進行中であり,本研究期間中は主にその理論的基礎研究を重点的に行なった。
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