研究概要 |
(1)超並列計算機を実現するための相互結合網の候補としてFat Treeを取り上げ,これを構成するためのルータの設計を行い,LCAを用いて小規模のルータを実現した.これを用いて4台のプロセッサ要素を結合し,簡単な実験を行い,性能を評価した.その結果,数Mバイト/秒の転送速度と,数ミリ秒の遅延時間が達成できることが確かめられた. なおLCA,およびハードウエア記述言語による相互結合網要素回路の設計を行うために,シリコンコンパイラ,LCAネットリスト作成ツール等,設計ツールを整備し,設計した回路の動作をシミュレーションによって確認したり,またLCAに実装して試験し性能測定を行えるように開発環境を整備し,これを使って研究を行った. (2)競合プロセッサ方式による並列配線処理方式は処理速度の点では満足な結果が得られているが,配線率の点からはまだ実用的には満足できるものではない.そこで別のネットの配線のために一旦出来上がった配線を引き剥し,後から再配線する方法を研究し,ネット数の少ない場合にはかなりよい配線率が得られることを確認した.しかしネット数が数100本を超えると,非常に時間がかかり,並列処理による速度向上では追い付かない.そこで引き剥しを部分的に抑制する方法を研究した. 実際の配線問題では複数のピンを接続するネット,すなわちマルチピンネットがあるのが普通であるが,これまではネットはすべてピンに接続するものとして配線を行っていた.そのために配線が余計錯綜することになり,配線率の低下につながっていた.しかしマルチピンネットにするとこの影響は軽減されるが,今度はこれを部分的に引き剥すことが難しくなる.この問題を解決するために1本のマルチピンネットを分割して並列に配線する方法を研究し,新しいアルゴリズムを開発した. (3)競合プロセッサ方式による手書き文字認識システムの開発を継続して行い,認識実験を行った.認識対象は手書き教育漢字データベースETL8Bより30字種を選び,ストローク抽出を行った後にすべてのストロークの属性とそれらの間の相対位置を特徴として抽出し,これを提示されたエージェントが,それぞれが代表する字種の構造知識ベースと照合してマッチする文字を同定する方法をとる.この時に類似文字が同時に同定されるとエージェント間で競合が起こるが,各エージェントは自分が推論に使用した知識と,相手が使用した知識の照合を行って競合を解消する.実験の結果,98%程度の優れた認識率を得ることが出来た.
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