研究概要 |
プロトタイピングでは,対象ソフトウェアのプロトタイプの構築・稼動・評価という3フェーズから成るサイクルをできる限り迅速に繰り返して回り,要求や実現方法を確認・修正・詳細化する.効果的なプロトタイピングを進めるためには,各フェーズのツール群の整備が重要である.プロトタイプの評価フェーズのツール群の整備は現段階では不十分である.プロトタイピングの評価では,振舞いを視認するだけで十分であるという議論もある.しかし,複雑な並行処理ソフトウェアの場合には,振舞いの視認だけでは不十分である.評価フェーズに効率的なツール群を整備して,プロトタイプの振舞いや稼動結果を詳細に診断する必要がある.そのような診断を踏まえて,ソフトウェアの開発者はプロトタイプの構築フェーズに戻る.その際にプロトタイプをどのように修正・改善するかは,出力された診断結果を見ても簡単にはわからないことが多い.このため,評価フェーズのツールの機能として,診断機能と共に,改善プランの提示機能が必要である. 本研究では,並行処理ソフトウェアの評価フェーズを効果的に進めるために,並行処理ソフトウェアの機能と性能それぞれに重大な影響を与えるボトルネック,タイムアップ,オーバーフロー,アンダフローについて,それらが起きる箇所と要因を診断しその改善プランを適切に提示するエキスパートシステムを検討し試作した.そこでは,プロトタイプの再構築に改善プランを反映させる処理系,並行処理ソフトウェアのプロトタイピングサイクル,エキスパートシステムにナビゲーション機能を付加したマンマシンインタフェース,デッドロックとボトルネックが交互に繰り返されることを可能な限り回避する方策,オーバフローとアンダフローが交互に繰り返されることを可能な限り回避する方策,などを検討した.
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