研究概要 |
分散メモリアーキテクチャを持つ超細粒度SIMD型並列計算機は,中粒度MIMDと並び超並列処理に最適な並列計算機アーキテクチャのひとつと考えられる。本研究では,細粒度SIMD型並列計算モデルのひとつと考えられるシストリックアレイに焦点を当て,その実用化をめざし,細粒度プロセッサ間通信方式,耐故障性,並列アルゴリズムの設計,同期方式など超細粒度SIMDアーキテクチャにおける問題点を理論的側面から解明研究することを目的としていた。 まず,1970年代のセルラオートマトンから1990年代におけるSIMD型商用並列計算機にいたる超並列計算機アーキテクチャとそのためのアルゴリズムについて調査し,その全体像の正確な把握に成功する。これらの結果は1991年末,共立出版より刊行した「超並列計算機アーキテクチャとそのアルゴリズム」に成果としてまとめた。本書は細粒度SIMDアーキテクチャとそのアルゴリズムについて著述された国内で最初の成書であり,世界的にも類書は極めて少ない。 次に細粒度メッシュアーキテクチャにおけるグローバルバス結合とローカルバス結合の役割分担について考察し,グローバルバスの計算能力,アルゴリズム設計並びに検証時のグローバルバスの有用性を明らかにする。さらに耐故障性を備えた最適時間同期方式を提案する。 最後に現有設備である256個のトランスピュータから構成される並列計算機上に,プロセッサ間通信並びに処理に要する時間をモニタするシステムを構築した。モニタリング結果はグラフィックディスプレイ上に表示され,良好なパラレルプログラミング環境を提供している。当システムを利用して,細粒度並列アルゴリズム設計におけるグローバルデータ転送と局所計算における両者のバランスの検討が容易になり,今後シストリック・アーキテクチャの効率評価が進むものと期待される。これらの研究成果については現在論文としてまとめている段階である。
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