研究概要 |
本研究では、知識情報処理の方法論を取り入れてバイオデ-タベ-スを解析することにより,電子伝達系タンパク質分子内部の電子伝達経路を明らかにした.以下にその概要を述べる. 1.一群のタンパク質分子のアミノ酸配列が与えられたとき,概念的クラスタリングの方法論により、アミノ酸配列の多重並置を行い,同時に分子群の分類樹を作成するためのシステムCLUSMOL/SをLisp言語により作成した.このシステムでは、specificなアミノ酸ばかりでなく、類似した性質を持つアミノ酸同士が並置される.しかも,分類樹の上位ノ-ドの構造としてgenericな配列が与えられるという機能を有している. 2.CLUSMOL/Sシステムを,NBRF一次構造デ-タベ-ス中のCytochrome Cを始めとする各種の電子伝達タンパク質に対して適用した.その結果,specfic/genericな保存残基を容易に識別することができた.ついで,3次構造デ-タベ-スPDBに格納されているtuna Cytochrome c上での保存残基間の距離を検討した結果,分子表面から内部のヘムに至る3本の候補経路を得ることができた.これらの経路に関与する残基は,全て共役電子を構成することができるものばかりであった. さらに,これらの経路を構成する残基からモデルタンパク質分子を設定し,分子軌道法計算を実行したところ,3本の経路の中で,Tryー74,Trpー59,Tyrー67,Metー80により構成されるものが,残基間で大きな電子的相互作用を示すため,電子伝達に直接関与する部分であると結論づけることができた. 同様の経路がCytochrome c550,c2およびブル-銅タンパク質に関しても得られている.
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