研究概要 |
本研究は、コモンマーモセットでの発生毒性試験(特に催奇形試験)における試験系を確立するとともに胎児に関する背景データーを収集することを目的とした。 コモンマーモセットは室内生れの20ペアを使用した。妊娠動物は分娩を指標とした短期間交配(分娩後7〜14日目の間)によって作出した。妊娠率は43%、流産率は8%であった。妊娠診断は腹壁からの子宮触診によって行い、妊娠45日目までに診断することができた。帝王切開は妊娠110日目(妊娠109〜111日の間)と妊娠100日目および妊娠120日目に実施した。妊娠110日齢胎児の平均体重は10.2g、体長は60mm、尾長は58mmであった。主要臓器の平均重量は心臓が84mg、肺が249mg、肝臓が343mgであった。また、主要骨の化骨化は妊娠100日齢および妊娠120日齢の胎児の発育とは明らかな違いが見られた。とくに妊娠00日齢胎児は比較的未熟であった。一方、胎児の摘出時に1例の死亡胎児が観察されたが、それ以外ではすべて生存が確認され、また、自然奇形も認められなかった。 レチノール酸(All-trans retinoic acid,SIGUMA CHEMICAL COMPANY)を用いて、コモンマーモセット胎児への影響を検討した。レチノール酸は妊娠50-52日の間、30mg,300mg/kg/日(N=2)と妊娠50-56日の間、50mg(N=2)、100mg,300mg/kg/日(N=3)を投与した。 流産が30mg3日間投与群で全例、50mg7日間投与群で1例、300mg7日間投与群で2例に観察された。胎児死亡が100mg7日間投与群で1匹(1/10,10%)観察された。また、側頭骨異常(56%)、下顎骨形成不全(44%)、尾骨欠損(11%)、四肢骨の異常(11%)が観察された。 このようにコンマーモセットがレチノール酸投与によって、他のサル類と同様に奇形を起こすことが確かめられた。
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