研究概要 |
得られた結果を大別すれば,次の通りである。[分散染色法の適用]天然染料による染色の最も大きな問題点であった染色方法の難しさを改善する為,分散染色法の適用を図った結果,いずれの場合も合成染料による染色とほぼ同様に行なうことが出来るようになり,染色経費の軽減と同時に,堅ろう度の改善にも有用であった。 [染料植物別の結果]紫根及び茜による染色の場合は紫外線吸収剤による後処理で日光堅ろう度を幾分かは改善し得るが,Al先媒染が日光堅ろう度改善の為には一つの問題点となり,FeまたはCu媒染に代えるのも一法であることが認められた。紅花の場合は紫外線吸収剤による処理では顕著な効果が得られず,色調に影響を与えない程度にCuイオンを併用することが重要であると考えられる。蘇枋,茶葉類,赤キャベツ等による染色の場合はFeまたはCuイオンと紫外線吸収剤の併用処理によりいずれも日光堅ろう度が改善されること,バイオ紫根については繊維の膨潤処理との併用によって顕著な効果が得られることなどが認められた。 [多数回煎出効果]葛による染色の場合に,7〜8回の煎出によって優れた染着濃度並びに日光堅ろう度が得られたことは,従来の天然染料による染色の根幹を再検討する必要があることを示唆するものであった。 [日光堅ろう度評価の方法]従前からも主張してきた通り,天然染料による染色布の日光堅ろう度を実用に即して評価する為には,今回設置したサンテスターによる試験が適していることが認められた。 [総括]従来から染料として使用されいてる天然色素の構造は非常に広範囲にわたっている為,堅ろう度の改善に関しては個々の色素毎に考えることが必要であるが,全般的にはFeイオンまたはCuイオンによる媒染と紫外線吸収剤による処理を,併用若しくは別個に行なうことにより日光堅ろう度を2〜4倍に改善し得る場合が多いようであった。
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