研究概要 |
界面活性剤水溶液のポリエステル布などへの垂直浸透の過渡現象における速度を支配する因子を明らかにする目的で,われわれが新しく開発した電子回路技術を駆使したぬれの過渡現象測定装置を用いて,浸透の過渡曲線を測定した。 2枚の平行平板電極に布を挟み,界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(n=18-10),SDS,AOT,あるいはラウリルトリメチルアンモニウムプロミド(DTAB)水溶液に接した瞬間から布への溶液の浸透と同時に電気容量が鋭敏に変化する。この変化を記録すれば,浸透のきわめて初期の段階から正確に追跡することができる。SDS,AOT,あるいはDTAB溶液-ポリエステル系での測定から濃度が増すと浸透速度は増加し,あるところから速度の低下が起こることが分かった。1秒以内の実験結果の過渡現象の解析をこれもで提出されている理論式を用いてをおこない,過渡期の毛管浸透を支配する因子を明らかにした。浸透速度の極大あるいは極小は,布のぬれ過程に於ける繊維表面で単分子膜あるいは2分子膜の形成が考えられる。 ポリエステル布への浸透速度に及ぼす界面活性剤の親水基の効果を明らかにするため,疎水基の炭素数が12のものについて調べたところ,ポリオキシエチレンラウリルエーテル(n=18-10)が低濃度で最も良好な浸透性を示し,ついでSDS,ラウリルトルメチルアンモニウムプロミドが最も浸透開始濃度が高いことがわかった。親水基が同じとき,疎水基の炭素数が長い(10-16)ほど浸透速度が大きいことが明らかになった。
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