研究概要 |
1.戦前日本における「化学工程」概念の形成過程を、化学工学史の一環に位置づけつつ、次の方法で研究した。 (1)酸・アルカリ工業にかんする技術書、工業化学書、化学工学書などの関係テキストおける操作、装置、工程概念の変遷を調べる。 (2)原料問題は原料の総合利用。すなわち結合生産の発達と密接な関連にあり、工程概念の形成に着目しつつ、原料の調査研究をも対象とする。 (3)日本における「化学工程」概念の形成という点では、工場における製造工程の研究が重要な意味をもってくるので、工場内過程にかんする研究の積植に注目する。 (4)1930年代に重視される装置の国産化との関連で、装置工学的研究が「二程」概念の形成に与えた彰饗を検討する。 2.以上の方法に基づく研究によって次の知見を得ることかできた、 (1)明治期には、硫酸、ヨード製造が比較的早期に発達したが、原料過剌から工学的には低い水準に留まり、技術的には主として操作法に留まった。それに対してソータ工業では原料不足から工程的思考が導入された。 (2)独自に工程としての理解は「化学装置」設計の必要性をとおして急速に進んだ、しかし、装置、機械、工程の理解は1930年代でも全体的にはなはだ不十分な水準に留まった。 (3)アメリカにおける単位操作、ドイツにおけるVerfahren,Aparatに対して日本では「化学機械」,「化学装置」の理解が一つの要をなしていたと思われる。
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