研究概要 |
急激な高齢化社会の到来を迎えて、高齢者が元気で幸せに生きてゆくためには、彼等自身が必要な体力を創造し維持してゆくことが必須となってきた。体力には、周知のように行動体力と防衛体力の別があるが、ここでは行動体力の中で主として運動能力について検討することとする。 行動体力を適確に判定するには、体力測定が必要である。日本では、学齢期から中年層までは、文部省が制定した「青少年体力テスト」及び「壮年体力テスト」が広く行なわれているが、これが適用できる範囲は60歳までであり、それ以上の高齢者層については、適当な体力テスト法が見当らないのが現状である。 励々は、高齢者の体力問題について研究している全国の研究機関に連絡して、12大学・2施設からそれぞれで実施している高齢者用の体力テストについて報告をうけ、それに基づいて高齢者に適する10数種目の体力測定用テストを編成した。測定項目は:身長,体重,握力(右・左及び平均),垂直とび,反復横とび,片足立ち(開眼及び閉芽),肺活量,肺活量1秒値,体前屈(立体及び坐位)及び皮脂厚(肩甲下部,上脆背部,服部の3点)である。 これらの中から,最も利用度の高い8項目についてバッテリ-テストを組み,性別・年齢別(5歳きざみ)の統計値を算出し,5段階の評価基準を設定した。利用したサンプルは,60〜88歳の2060名(男子900名,女子1160名)分である。 なお,上記の評価基準が妥当なものであるかどうかを検討するために,新たに,広島県呉市ならびに京都府京都市の老人クラブに依頼して,60〜85歳の高齢者209名の体力測定を実施し,上のバッテリ-テストに基づく体力評価を行ない,これらの体力テストが高齢者にも安全に実施することができ,且また妥当な体力評価が可能であることを確認した。
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