研究概要 |
本研究は,0歳から6歳までの子供について精密把握運動における把握物体の重量に対する適切な把握力の中枢プログラミング的発揮機能の発達について調べることが目的であった。平成4年度は,2歳から6歳までの子供に関するデータの収集と分析,全研究のまとめを試み,以下のような結果を得た。 (1)把握運動の時間および把握力は共に5歳まで向上し6歳ころで成人とほぼ同様の値になった。 (2)把握力の微分曲線は,0-1歳児では多峰性パターンが多く出現したが,2歳頃から曲線のピークが高い単峰性のパターンに移行し6歳頃には成人パターンに類似するものとなった。 (3)把握力・持ち上げ力関係からみた摘み運動と手および前腕の屈曲運動の協調的運動能力は,5歳頃まで発達することが認められた。 (4)把握物体の重量に対して適切な把握力を準備発揮(中枢プログラム)する能力は,0-1歳ではきわめて未熟であった。その能力が3歳までに急速的に向上し,5歳頃にほぼ成人と同様の能力に達した。 (5)5日間の把握持ち上げ訓練によって把握物体の重量に対応した把握力の準備的発揮能力は,0-1歳児においても多少の向上が見られた。しかし2-4歳の子供での向上が顕著であった。 これらの結果は,手指の微細運動系に関与する枢プログラミング機構がきわめて早期(0歳後期)の段階から起動していることを示唆するものである。また,その機構が2-4歳の時期に急速的に発達することは,この時期での多様な感覚入力とそれを利用して運動出力に変換する経験の重要性を示唆するものである。
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