研究概要 |
肝細胞内に取り込まれた薬物や発癌性物質はグルタチオンやUDPーグルクロン酸と反応し抱合体を生成することにより解毒化され、胆管内へ輸送される。これら抱合体の輸送はATPに依存した特異的輸送体によるものと考えられており、先に我々はラット肝臓形質膜のcanalicular小胞体において、この輸送がATPに依存した一次能動輸送であることを明らかにした。しかしながらATPがこの輸送にどう共役しているか分かっていない。そこで本研究ではラット肝臓形質膜より、この輸送タンパク質を精製し、この性質を調べることにした。 ラット肝臓により形質膜を単離し、オクチルグルコシド(OG)により可溶化し、種々のカラムクロマトグラフィ-により精製を行った。なお活性は各段階でリポソ-ムに再構成し、ATPに依存したグルタチオン抱合体のリポソ-により精製を行った。なお活性は各段階でリポソ-ムに再構成し、ATPに依存したグルタチオン抱合体のリポソ-ム内への輸送を調べた。可溶化後2,4ーdinitrophenyl glutathione(DNPーSG)が結合したアフィニティカラムおよび高速液体クロマトグラフィ-によるゲルロ過により60倍活性が増加した。またこの再構成系にて、ATPに依存したDNPーSGおよびロイコトリエンC_4(LTC_4)の輸送がみられ、グルクロニドの輸送は観測されなかった。このことはグルタチオン抱合体とLTC_4は同一の輸送体であるが、グルクロニドは別の輸送体であることが分かった。またこの精製したタンパク質はATPase活性が見られ、DNPーSGの添加によりATPase活性が約2倍増加した。またこのATPase活性に対するDNPーSGおよびATPに対するK_m値は輸送に対するそれとよく一致することから、このATPase活性と輸送が直接共役していると結論される。またこの輸送タンパク質の分子量はSDSーゲル電気泳動により、62,000であることが分かった。
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