研究概要 |
1.ヌクレオチドピロホスファターゼ(NPPase)遺伝子の転写量の測定----ノーザンブロット法により、正常ヒトおよびLowe症候群患者皮膚繊維芽細胞中に存在するNPPaseのmRNA量を測定した。初年度の測定では、患者細胞中では本酵素の恬性上昇ににほぼ比例してmRNA量が上昇しているとの結果を得たが、その後、例数を増して測定した結果、NPPase恬性が上昇しているにもかかわらずmRNA量が正常細胞に近いものも存在することが判明した。 2.ヌクレオチドピロホスファターゼ遺伝子の染色体上での位置の決定----NPPaseのcDNAの断片を用いて,in situハイブリダイゼイション法により,本酵素の遺伝子がのっている染色体の種類と位置を調べた結果,第6染色体のq22-q23であることが明らかとなった。Lowe症候群はX染色体に連関した疾病であることから、この結果はNPPaseがLowe症候群の直接の原因遺伝子ではないことを示している。 3.NPPase遺伝子のクローニング----ゲノムDNA断片をEMBL,pWE15またはSacBIIに組み込み,NPPaseのcDNA由来のプローブを用いて,NPPase遺伝子のスクリーニングを行ったが,5'-非翻訳領域または5'-隣接領域を含むクローンだけは、いずれのライブラリーからも拾うことができなかった。 4.動物細胞でのNPPaseの発現----NPPaseの二つのcDNAを連結してフルレングスのcDNAを作製し,動物細胞発現ベクターであるpMSGに組み込み,CHO細胞に導入した。この細胞をクローン化したところ、NPPase活性が著しく上昇したいくつかのクローンが得られた。この活性はデキサメタゾン存在下で細胞を培養することにより,さらに大きく上昇することから、pMSGに挿入されたヒトのNPPase cDNAに由来するものと思われる。発現したNPPaseは分子量で約13万で,ヒトのNPPaseに対して作製した抗体と反応した。
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