研究概要 |
哺乳動物においては,アルドステロンは腎臓におけるNa^+の再吸収能を高め,またK^+の尿中への排泄を増加させることによって血持している。その生合成と分泌は副腎皮質において行われ,レニンア-アンジオテンシン,心房性ナトリウム利尿ペプチドやACTHによって調節される。一方カエルなどの両生類においては,アルドステロンはNa^+の皮膚からの流出を防ぎ体液のイオン平衡を保つのに必須のホルモンであり,腎臓表面にある中腎組織で生合成される。われわれは先にウシのアルドステロン合成酵素の本体がP450(11β)であることを明らかにした。つまりウシではP450(11β)がデオキシコルチコステロンのコルチコステロンへの変換を触媒するばかりでなく,コルチコステロンのアルドステロンへの変換も触媒する。われわれはさらにラットではP450(11β)に2亜型があり,1つは11-水酸化酵素(コルチコステロン合成を触媒する)であり,他方がアルドステロン合成酵素(デオキシコルチコステロンから直接アルドステロンを合成する)であることも明らかにした。 本研究においては,高いアルドステロン合成活性を持つカエルの中腎組織からウシP450(11β)cDNAをプローブに用いてカエルのアルドステロン合成酵素をクローニングしてその性質を調べた。その結果,カエルのP450(11β)前駆体は517個のアミノ酸からなるタンパク質で,ミトコンドリアに輸送されるときに約45個のアミノ酸からなるエクステンションペプチドが切り離される。成熟酵素のアミノ酸配列はラットのP450(11β)あるいはP450(11β,aldo)とおよそ50%の相同性を持つ。この酵素はウシと同様に単一の酵素分子がデオキシコルチコステロンからアルドステロンまでの変換活性をもつことなどがわかった。
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