研究概要 |
ガドリニウム(Gd)を用いる中性子捕捉療法(NCT)の可能性を調べるために、腫瘍の大きさ、位置を可変できるファントムを用いて計算と実験を行ない線量分布を求めた。計算は、2次元中性子輸送コードDOT3.5を用いてファントム内の熱中性子とγ線の線束を算出し、これに線量変換係数を乗じて中性子とγ線の線量分布を求めた。その結果腫瘍内にGdが5,000ppm含有していると、ホウ素( ^<10>B)を用いるNCTと同様な線量分布が得られ、Gdを用いるNCTが可能であることを示唆した。この計算結果を検証するために、ファントム実験を、JRR3Mの熱中性子照射場を用いて行なった。計算と実験の結果、以下のことが明らかになった。1)腫瘍部のGd濃度を増加させると腫瘍部の線量を増強できるが、その増強割合はGd濃度に1対1では比例しない。2)この線量増強は、中性子ビーム径が大きい程、又、腫瘍位置がファントムの表層部に存在する時程大きくなる。3)線量の大部分は.Gdの熱中性子捕獲γ線と、それが内部転換して放出する電子によるものであるが、フィルムを用いた実験の結果は、内部転換電子の線量寄与は小さいことを示した。4)即ち,捕獲γ線は生体内での飛程が長いので、 ^<10>Bを用いるNCTのような細胞レベルな線量分布ではなかった。5)しかしながら、表層部の腫瘍に,Gdが5000ppmも含有していると、4×10^9ncm^<-2>s^<-1>の熱中性子の入射により、25Gyh^<-1>の線量率が得られる。6)深部腫瘍の治療には熱外中性子が有効であることなどを総合的に、線量分布を評価すると、Gdを用いるNCTは、ホウ素を用いるNCTに匹敵する放射線治療法になりうるものと思われる。
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