研究概要 |
本研究は都市化の進展による土地改良区の対応について,全国から3つの事例調査によって,その基本的なあり方を明らかにしたものである。その結果,飛地的都市化(兵庫県東播土地改良区)・住宅化を主軸とした都市化(新潟県西蒲原土地改良区)・工業化を主軸とした都市化(愛知県明治用水土地改良区)など,いかに都市化のパターンが異なっても,共通して指摘できることは,土地改良区の主体である零細農家に基づく村落共同体が著しく弛緩・空洞化し,農業水利施設の維持管理システムが機能しなくなったことがある。 さて,3地域でとられた土地改良区の対応策(活性化逸策)には地域差がみられる。第1に輪中地形の西蒲原土地改良区では,自然堤防の新潟市・燕市など12市町村の都市化による輪中内土地改良区の揚排水機の経費支出増に起因する都市排水費負担金の徴収を実施している。第2に洪積台地の東播土地改良区では,中国自動車道,滝野・社インターチェンジ設置を契機とする急激な都市化で小野市・社町・滝野町の上水道が逼迫したことに対し,土地改良区では血池干拓の見直しによる農業用水の転用(370万m^3)という水利調査が実現している。 以上の2例の研究成果は,「水」をめぐる都市と業村との共存関係を示した知見であるということができる。 ところが,明治用水土地改良区では,自ら流域管理組識の中核となって矢作川沿岸水質保全対策協議会を結成しており,事業所などに対する排水指導し大規模開発行為に判う土地利用転換の適否の環境アセスメントを実施していることがわかった。実はこれこそ水利用と土地利用とを統合した流域管理の主体者としての土地改良区のあり方を示唆する典型例であると評価することができた。
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