研究概要 |
平成3年度に,厚さ10cmの鉛箱を作成した.この鉛箱中にまず,ガラスチューブに入った熱ルミネッセンス(TL)素子をおき,その被曝線量蓄積の検討を行った.その結果,厚さ10cmの鉛箱中では線量蓄積の時間増加はなかったが,真鍮チューブ,銅チューブではその厚さにほとんど影響されない線量蓄積が確認された.また,各地に埋設した線量計の線量蓄積は地域ごとに違いがあり,年間線量の測定はテフラと同一地点で測定する必要があることが明らかになった. 平成4年度には,山陰地域でテフラ層序の鉱物組成,火山ガラスの屈折率など記載岩石学的性質を検討し,参考試料として,北陸地域に分布するテフラについても同様の検討を行った.それら,層序の明らかになったテフラについて,TL強度を測定した.TL強度はテフラのそれぞれではほぼ再現性のある被曝線量が測定された.しかし,テフラの中には線量蓄積の少ないものもあり,TL測定がすべてのテフラに適用可能であるかどうかについての検討が出来た.すなわち,K-Tzは鏡下で石英粒子が多量に認められ,大きな線量蓄積がある、他方,K-Tzによりも層序的に下位の扇の山テフラの場合,TL強度はK-Tzよりも弱い.一方,K-Tzよりもかなり古い,北陸の火砕流堆積物では,TLはかなりつよく測定される.また,大山の降下軽石の一部は明らかにTL発光が認められる.これらは鉱物組成と降下後の時間の反映であり,TLは蓄積されやすい鉱物を含むテフラ,古いテフラでは強いことが判った.これはTL強度はテフラ相互に比較することが出来ないが,年代を数字で出す場合,それぞれのテフラの被曝量に対する発光量を測定する必要があることを示している.なお,今後,より高温部でのTLの発光状態を測定する予定である.
|