研究概要 |
侵蝕段丘面下における基盤岩石の風化速度を表わす経験式の確立を目的として,房総半島および秩父盆地の侵蝕段丘面(計11段,離水年代:70〜70,000年)の段丘面下における基盤岩石の風化帯の厚さをボーリングおよび弾性波探査で測定し,次の結果を得た。 1)侵蝕段丘面下という一定の風化環境における基盤岩石の風化速度,すなわち風化帯の厚さが時間とともに増加する速度,が次のように定式化された。dz_H/dt=0.4×10^<-3>t^<-0.27>,dZ_M/dt=1.1×10^<-3>t^<-0.30>,dZ_S/dt=2.8×10^<-3>t^<-0.37>,dZ_F/dt=4.6×10^<-3>t^<-0.32>.ただし,Z_H,Z_M,Z_SおよびZ_Fはそれぞれ基盤岩石の表面から強風化帯,中風化帯,弱風化帯および微風化帯の基底までの厚さであり,tは風化時間である。 2)風化速度は時間とともに指数関数的に遅くなり,しかも微風化,弱風化,中風化,強風化と風化程度が高くなるほど,風化速度は遅いことが実証された。 3)同一または類似の風化環境では,硬岩よりも軟岩のほうが、その風化速度が大きいことが実証された。 4)風化物質の色調,節理間隔(割れ目),硬さなどに関する視察は,他の種々の定量的物性(縦波速度,横波速度,山中式貫入硬度,間隙径分布など)と比較することによって,かなり有力な分帯方法になり得る。 4)崩壊発生などに重要な意味をもつ強風化を、弾性波探査によって検出するためには,縦波探査だけでは不十分であって,横波探査が有力であることが判明した。 広い段丘面の下に比べて,段丘崖に近づくほど,風化速度が速いことが知られた。
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