研究概要 |
GH_3細胞は、サイロトロビン放出ホルモン(TRH)刺激により細胞内Caイオン濃度の上昇をおこし、プロラクチンを分泌する。 TRH刺激により、細胞内情報伝達経路を介して、二種類のCaチャンネルがどのような調節を受けるかを調べた。 wholeーcell voltageーclamp法により、低閾値で活性化され持続時間の短いT型Ca電流、高閾値で持続の長いL型Ca電流を記録した。TRH刺激によりT型電流の増加とL型電流の可逆的な減少が起こることが、はじめて明かになった。同様の効果は、外液にTRHが存在しなくても、非水解性GTPアナログ(GTPYS)の細胞内への投与によっても起こった。 この時、TRH、GTPySの投与により、T型、L型電流の両者とも、それらの活性化、不活性化の膜電位依存性は有意に変化しないことが分かった。さらに、百日咳毒素を前処理すると,このようなTRH、GTPySのT型チャンネルへの効果は消失する。L型チャンネルの効果が百日咳毒素により阻害されるかどうかについてはまだ確認していない。 これらの事を総合すると、TRHは、T型、L型チャンネル電流の性質を変えることなく、それらの振幅のみを増、減させることにより、Caイオンの細胞内への流入を調節していることが明らかになった。 GH_3細胞の場合、TRH刺激によるイノシト-ルリン脂質代謝(PI)回転が生化学的に実証されている系である。 このPI回転に関与するGタンパク質は百日咳毒非感受性であることが分かっているので、我々により得られたTRHによるT型電流の増加のメカニズムには、PIのセカンドメ-センジャ-は関与しないことが示唆された。 Cキナ-ゼの活性化剤である膜透過性。フォルボ-ルジブチレ-ト(PDBu)を細胞外に投与しても、T型Ca電流の増加は起こらなかったので、T型Ca電流の増加には少なくともCキナ-ゼは関与していないことが分かった。
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