研究概要 |
学習をすゝめて行く上で,次のa)〜c)の能力は必要不可欠のものである。 a) 自分で自分が何をどのように考えているかがわかる。b) 他の人と一諸に思考を展開して行くとき,自分達が何を,どのようにして考えているかがわかる。c) 誰が何をどのように考えいるか,(すなわち他人の考え)がわかる。 しかし,紙とエンピツによる従来のペーパーテストでは上記のa)〜c)に関する能力を測定・評価するためのテスト方法がまだ確立されていない。そのために,たとえ,同じ答案であっても,それが自力で考えた末に得られたものか,他の人に手助けしてもらいながら考えて得られたものか,他人の考えたものを棒暗記しただけのものなのか,答案だけでは区別できないのである。 このことを可能にするようなテスト方法を開発することは本年度の最も重要な課題の一つであった。 我々は数学的命題とその証明をつくり上げていくための5つの活動に注目して生徒達の思考のプロセスをコンピュータに記録し,その実態を明かにして行く一つの方法を確立することに成功した。 しかし,それはあく迄も,一個人の思考に限定されたものであり,他人の思考や他人との協同思考については考えられていない。 我々は思考の場に関する情報を収集する活動を構成する3つの活動に着目し,前記の5つの活動と合わせて8つの活動の実態を明かにすることによって,上記のa)〜c)に関する能力を測定・評価することが可能なことがわかって来た。これが本年度得られた最も大きな成果であった。
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