本研究は、今日の国際化時代にあって急速に多民族化が進展してきているわが国において、これからの大きな教育課題になると予想される「多文化教育(Multicultura Education)」の社会科における意義と課題を考える基礎的研究である。本研究では、すでに多民族社会を経験している欧米において研究が進められている多文化教育を思考モデルとして、これからの多文化時代の日本の社会科のあり方を考える視点を提出することを目的に研究を進めてきた。 最終研究年度に当たる本年度は、昨年度に収集した資料をもとに、特にアメリカ、イギリス、日本を取り上げ、分析・検討を行った。それにより、次の諸点を明らかにした。 第一に、「多文化教育」とそれに関する用語の基本的概念を明確にするとともに、アメリカを中心に今日の多文化教育の現状について、ERICのデーターベースの計量的分析を通して明らかにした。第二に、多文化教育が社会科のカリキュラムの中にどのように具体的に反映されているかをカリフォルニア州の社会科フレームワークの分析を通して明らかにした。第三に、アメリカの歴史教科書とイギリスの地理教科書における「マイノリティ」の取り扱いについての代表的な研究で取り上げ、そこから日本の社会科教科書のあり方への示唆を得た。第四に、日本の中学校の社会科教科書を対象に、そこに描かれた「女性」のイメージについて分析した。最後に、まとめとして、今日の日本における多民族社会の到来の現状を明らかにするとともに、そのような状況の中で社会科において多文化教育を実践する場合の課題とそのあり方について提案した。 最終的に、本研究の成果を、「研究成果報告書」(別冊)という型でまとめた。
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