1 国語科存続の経緯 (1)「国語科基礎科目」論ー修身・日本歴史・地理の授業停止及び関係教科書回収の命令以来、同じように軍事的・超国家主義的教材でその半数以上を満たしていた国語科も同様の命令が発せられることを覚悟していた。が、国語は算数と並んで基礎科目であり、これらまで授業停止、教科書回収という事態になったならば、せっかく精力的に開始されていた教育再建に向けての努力が頓挫し、かえってその衝撃の方が大きいと判断し、その改善を条件に存続が許されたのであった。 (2)「占領と言語政策」論争ーCIEのスタッフの一人であったロバ-ト・キング・ホ-ルは、強硬な国語改革論者であった。ホ-ルは漢字を廃止して、ロ-マ字を採用させようと果敢にその改革を押し進めようとしたが、《征服者が被征服者に言語改革を強制して成功した歴史がない》とする良識派の意見が大勢を占めたお陰で、この一大変革から免れることができた。結局、こうして国語の存続が国語科の存続を導いたのであるが、国語科存続の背景に「占領と言語政策」という古くて新しい重い課題が直面していたことを知ることができるのである。 2 国語科改革の動向 (1)国語教科書の改革ー教科書の検閲は情緻を極めた。英訳原稿を事前に提出させ、内容から表現の細部に至るまで克明に吟味した。しかし、このことが結局、民主主義に基づく国語科の再建に貢献する一助となった。 (2)国語改革への提案ーホ-ルの急進的な国語改革案は実現に至らなかったが、1946年3月に来日した対日教育使節団はロ-マ字採用を示唆し、これが後に国語科にロ-マ字学習を取り込むことにつながったのである。
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