現代学校は、メリトクラシ-とセクシズムというふたつのイデオロギ-を内在した制度である。本研究は、この現代学校における性別進路形成過程を記述、説明することを目的とし、本年度は以下の作業を行った。 1.ジェンダ-と教育研究に関する文献のレビュ-:欧米およびわが国における、(1)ジェンダ-に関する社会学的研究、(2)青少年の進路選択に関する教育社会学的研究を、収集し、レビュ-した。本年度はとくにわが国の戦後学校社会学における「女性と教育」「ジェンダ-と教育」をテ-マとする研究を重点的にレビュ-して実証研究の課題抽出につとめた。欧米における研究から、通常は社会階層(階級)の再生産を説明する際に用いられる「文化的再生産理論」が、ジェンダ-と教育的不平等問題をも説明する可能性が高いものと考えられた。わが国では「ジェンダ-と教育」に関する研究が最近あらわれているものの、いずれも欧米での研究の紹介にとどまるか、ないしは社会階層(階級)の観点を欠如しており、階層・階級とジェンダ-という双方の観点を含んだ実証的研究の必要性が導かれた。さらに解釈的アプロ-チによる学校内部過程研究も有効である可能性が強い。 2.既存デ-タの分析と再解釈:青少年の進路形成過程に関する既存デ-タを、分析・再解釈した。利用したデ-タは、筆者が独自に行った質問紙調査から得られたデ-タである。これは学校階層上で異なる地位にある複数の高等学校に在学する生徒たちの進路意識を、入学時点から卒業時点まで追ったパネル調査であり、性別進路形成の観点から引続き再分析した。 平成4年度は、高校生対象の実証的調査研究を企画、実施し、上記デ-タの再分析によって得られた仮説を検討する予定である(深層的面接および質問紙による)。
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