多様な人々との調和的共存は、今日、国際的にも国内的にも、また、一般社会でも学校教育の場でも、重要な問題の一つになっている。本研究は、発達的・比較文化的見地より、この課題への接近を試みたものである。 過去一年間の萌芽的研究の成果の一端は、以下の通りであり、この現象の機構の解明は、今後の課題である。 1.米国・中国の研究者との相互討論を通じて、(1)歴史的、社会的、文化的背景を異にする米国人・中国人および日本人の「他の人と違っている」と判断する基準の相違とその形成過程を検討し、(2)「相違への耐性」の発達を調査する課題ー日本語版・英語版・中国語版の三種ーを作成した。2.上述の調査を、米国のデトロイト郊外と日本の松山(中国は実施中)で、小学5年生・中学2年生・高校2年生、総計676名(米国269名、日本407名)を対象に実施した。3.全体の資料は、多岐にわたるが、(1)全体として、米国・日本の児童生徒は「相違への耐性」を持っていること、スポ-ツや勉強が不得手な人と友人になりたくない傾向が共通すること、日本の方が、勉強のできない人や乱暴な人と一緒に活動するのをいやがり、いたずらをする人と一緒に活動することを好むこと、(2)男では、「相違への耐性」がより大であること、ただし、勉強の不得手な人と友人になりたくない傾向があり、日本の方が、勉強の不得手な人と一緒に活動するのをいやがり、いたずらをする人と友人になることを好むこと、女子では、日米共通して、スポ-ツや勉強の不得手な人と友人になりたくない傾向があり、後者とは一緒に活動することもいやがり、米国女子では、さらに、内気な人や貧芝な人と友人になったり活動したりすることを、日本では、勉強が不得手な人と活動することを、それぞれ嫌う傾向がみられること、(3)日本では、学年が上がるにつれて「相違への耐性」が低下すること、などが明らかにされた。
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