EC統合にかんしては、市場統合→通貨・経済統合→政治統合といった統合のプロセスが急テンポかつ確実に進められている。「主権国家の経済的機能の一部を国際的地域機構へ委譲する」ことと、「多民族国家の解体と、民族主義の台頭」が同時に行われている。とくに、政治的意義に着目すると、一国家が経済的統制権限を手放すことは、これと対になってきたこれまでの「福祉国家」政策下の「大衆統合様式」の見直しという問題を生じしめることになる。また現実的には、EC域内での格差問題の深刻化は不可避であろう。 一方東西ドイツ統一も、急テンポで進められている。しかし、統一後のドイツでは、州レヴェルでの選挙で野党SPDが3回連続勝利するなどの結果の連邦参議員の勢力関係の逆転、歯止めのない失業率の増加など決して順風満帆ではない。統一が、旧西ドイツが旧東ドイツを吸収するという形で行われたことへの批判は大きい。統一条約における2年以内の基本法の見直しも順調でない。社会的基本権、労働の権利などの基本権化=社会国家化問題、環境保護の国家目標化問題など問題は噴出している。旧東ドイツ的なものの「清算」が、公務員任用差別問題では新たな就業禁止問題を引き起こしている。予想以上にてこずっているのが、「私有化」問題である。人民所有企業の民営化問題、地方自治体の所有権帰属問題→自治体の再建問題にかんして苦慮している。人民所有企業の民営化などの「私有化」を推進してきたのが信託協会(Treuhandanstalt)であるが、信託協会の組織・権限の問題もさることながら、「所有権返還原則」という「私有化」の大原則が、人民所有企業の民営化などの「私有化」を阻んでいる問題が明らかとなってきている。同時に予想以上の東ドイツの環境汚染(とくに既存負担(Altlasten))も、旧西ドイツの投資家にとっては、民営化の大きな障害となっている。
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