フルタイマ-の労働市場を第一次労働市場、パ-トタイマ-の労働市場を第二次労働市場と考えれば、この2重労働市場の存在は効率賃金理論によって理論的に説明が可能である。第一次労働市場では、企業は労働者の労働意欲を高揚し、そのことによって労働生産性を高めるために効率賃金を支払うが、第二次労働市場ではその必要がなく、完全に競争的な労働市場が存在すると考えられる。 最近、フルタイマ-とパ-トタイマ-は同じ仕事をしている事が多く、パ-トタイマ-の仕事の領域は、補助的な仕事から基幹的な仕事、責任のある仕事へ広がってきている。本研究で行った調査結果も、パ-トタイマ-のやる気や労働意欲、仕事に対する満足度は充分に高く、パ-トタイマ-が同じ時間内にこなす仕事の量がフルタイマ-と比べて大きく変わらないことを明らかにしている。 パ-トタイマ-とフルタイマ-の労働市場はその分断化の傾向が弱まってきているように思われる。実際、職場では、パ-トタイマ-からフルタイマ-に、あるいはフルタイマ-からパ-トタイマ-に、雇用形態の変更も可能になりつつある。パ-トタイマ-を雇用することにより、企業はパ-トタイマ-がフルタイマ-と同様な戦力となる労働者であることを認識し始めてきているといえよう。パ-トタイマ-の基幹労働力化が進み、パ-ト労働の内部化も進んでいる。賃金格差や労働市場の動向から判断して、パ-ト雇用の増大現象に効率賃金理論を使った解釈を行った。1980年代、とくに後半になってからフルタイマ-に対する効率賃金は、その効率性を失ってきている。 なお、当研究者は、1992年5月から1993年3月までクリ-ブランド州立大学に滞在し、引き続き、アメリカのパ-トタイマ-とフル-タイマ-の就業実態調査および効率賃金の研究を行う。
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