本研究は、沖縄における水利用、水利慣行の実態を把握して沖縄の水利特性をカ-(井泉)を軸に解明することにあった。単年度のみの調査であったが、その結果、以下の事項について知見をえることができた。(1)沖縄全自治体53のなかで既刊の自治体史(誌)からカ-(井泉)に関連する項目のチェックにつとめることができた。 (2)上記の諸資料を集落発祥のカ-・集落共同のカ-・ノロ(神女・祝女)専用のカ-・みそぎのカ-・産湯を汲むカ-分類・整理する作業に着手することが可能な体制をとることができた。 (3)時間的制約もあって、調査対象地域は主として石垣市・平良市・城辺町・下地町・上野村・多良間村、中部圏域の沖縄市、南部諸地域であったが、人々にとって水は生命であり、それだけに切実な人間の歴史があることを確認した。 (4)カ-の問題を考えることは、村落構造、労働形態、民間信仰の本質を捉える重要な点であることを確認した。 (5)生活環境が破壊されていく今日的な状況下で、カ-を軸とした生活がどのようなものであったかを再確認することにより、自然にたいする畏敬の念を21世紀を背負って立つ子供たちに伝えていくことの重要性を痛感した。また、カ-は道路整備、宅地造成、土地基盤整備事業によって大半が埋められていく危険性があるので、その保存につとめることが大切であることを実感した。
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