前年度に得た、代数曲線の分岐2次拡大によるア-ベル多様体のツイストのモ-デル-ヴェイユ群の構造定理を、不分岐2次拡大の場合へ拡張した。これによって、任意に与えられた1変数代数関数体の2次拡大に対してそれによる任意のア-ベル多様体のツイストのモ-デル-ヴェイユ群の構造定理が出来上がったことになる。この一つの帰結として、もし代数曲線の2次の被覆であってそのプリム多様体がある楕円曲線をr個単純成分としてもつものがあれば、関数体上の楕円曲線であってそのモ-デル-ヴェイユ群のランクがrであるものが存在することがわかる。この具体的な一例として、3つの独立なパラメ-タ-をもつ楕円曲線の族であってそのモ-デル-ヴェイユ群のランクがちょうど4であるものを構成することができた。またもう一つの応用として、有理数体に2次拡大を何回かくりかえして得られるような体の上の楕円曲線のランクの挙動についてJ.Topが得ていた定理「2次拡大をくりかえすことにランクが1ずつふえていくような楕円曲線が存在する。」を次のように拡張した:「2次拡大をくりかえすごとにランクが2倍になっていくような楕円曲線が存在する。」これは有理数体上の楕円曲線のランクの知られている最大値が14であることからすると、非常に興味深いことであると考えられる。この定理を得るにあたってある種の帰納的な手法(古い2次拡大から新しい2次拡大をつくってランクをふやす)が現れて来つつあり、これを更に一般化・精密化していくことが今後の急務である。
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