研究概要 |
[目的] 銀河中心方向の星間塵は〜3μmに吸収を示す。この吸収は星間塵のSiーO骨格に吸着したH_2Oによることを明らかにした(Wada etal.,ApJ,375,L17ーL20,1991)。この吸着水の銀河中心方向へのコラム密度を、実験をもとに算出する。 [測定系の改善] 1.製造したSiーO急冷固体に吸着した水の量を測定するために、石英製加熱セルを製作した。2.超微量天秤(0.1μgまで測定可能)を活用し、試料の加熱前後の質量の微少変化から脱離水の質量を測定できるよう、条件設定した。3.加熱時の熱量変化から構造変化を推定するために、走査熱量測定装置(DSC)を活用した。4.これと並行し、加熱前後の試料の赤外スペクトル変化を調べた。 [結果および成果] 1.SiーO固体に含まれる水は2種類である。すなわち、生成時に骨格に取り込まれ、100℃で脱離しない難脱離水と、および生成時以後に吸着された、100℃までに脱離する易脱離水である。星間塵の吸着水量の推定には、この混合比率の確定が前提となる。2.赤外スペクトル測定から、難脱離水は2.80〜2.86μmに、易脱離水は〜2.99μmにピ-クを示す。3.難脱離水は生成時の条件(H_2Oの共存の度合い)により、取り込まれる量が決まる。4.Siー0急冷固体の吸着水の赤外ピ-クは、離脱離水と易脱離水の混合比率により、形が多少変化する。5.赤外スペクトルの差スペクトルから、易脱離水の赤外ピ-クを求められる。これと併せ、加熱時の質量減量の測定を行い、易脱離水の質量吸収係数を求め、〜1.9×10^4cm^2/g得た。難脱離水の質量吸収系数測定には、加熱時のSiー0骨格の変化が大きく関連しているので、今後の課題である。したがって、星間塵の吸着水のコラム密度は、難脱離水の質量吸収係数が確定したのち算出できる。
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