研究概要 |
X線領域で使う分光素子として結晶や回折格子を使った分光器はこれまでも使われてきた。結晶を使ったものは一般に分解能は良いが広い波長バンドを分光するには効率が悪い。また,反射型回折格子は,数keV以上のエネルギー領域で使うためには,分散角が小さいにもかかわらず,たいへん斜入射光学系で使用する必要があり,0次光による悪影響がどうしても出てしまうことや,大きなものを作成するのが困難であるという問題がある。そこで数keVあたりのX線を分光するためには透過型の回折格子が有望となる。ところが,X線領域で使う透過型回折格子の場合,反射型で使われるブレーズ角の考えが導入できないために,分光された光である1次光への効率が悪いという欠点がある。 そこで,この研究の於て,1回反射を使った透過型の回折格子を考案した。そうすることによって,あたかもブレーズ角を持った透過型回折格子が可能である。この考えを元に計算機による数値実験を行なった。そして,試作した新しい回折格子と,マイクロチャンネルプレートを回折格子として使用して,それ等を可視光を使って実験的に評価した。その結果新しい考えを導入した透過型回折格子は,0次光を小さく1次光を強くすることが可能であることを確かめた。この考えを基に新しいタイプのX線用透過型回折格子を作成すれば,宇宙X線観測用としてたいへん有望な装置を開発できる。
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