研究概要 |
実施計画に掲げた3項目について次の成果が得られた. (1)ピコ秒UVパルスの発生と蛍光の測定.UV光の発生については,KDP結晶を用いて色素レ-ザ-の第2高調波(10ps,4MHz)が得られるようになった.それによって,強誘電結晶であるTGSおよびKDPについて,その構造相転移温度近傍での蛍光寿命を測定することができた.分子性結晶の場合に比べると寿命の短縮化は顕著でないが,UV励起によって生ずる蛍光にも転移に伴う転移に伴う異常がみられた.さらに育成したばかりの処女結晶を加熱する過程では,Tc以下で歪の消滅による蛍光寿命の変化が現れることが判明した.これは,この実験方法が,結晶中の局所的な構造の揺らぎを敏感に検知していることを示している.これらの結果は 日本物理学会春の分科会(1991.3)日本物理学会第46回年会(1991.9)及び5ーth International Conference on TimeーResolved. Vibrational Spectroecopy(Waseda Univ.Tokyo)June 1991.において発表された. さらに,Siの微粒子結晶にみられるような比較的強度の大きい,かつ長い寿命を示す物質の蛍光の測定には,UVのフラシュランプ光源(設備備品として購入したマイクロフラッシュMSー100)によっても測定できることが判明した.これは,位相共役発生用の色素膜における燐光寿命の測定にも用いられ,今後の相転移の研究にも有効にもちいることができる. (2)不純物をド-プした結晶の育成. 上記の強誘電結晶については色素のド-プは殆ど不可能であることがわかった.またスクロ-ス結晶についても色素の混入を色々の条件で試みたが偏析して一様には混入しなかった.しかし,ド-プしない結晶でもUV光によって測定が可能であることがわかった. (3)融解現象の測定.1次転移の極端な例として融解現象があるが,今年度の研究によってスクロ-ス結晶の融解点近傍での criticalーspeedingーupが明瞭に観測できた.これは融解現象の前駆現象の初めての観測であり,1992年春の物理学会で発表の予定である.
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