研究概要 |
Nーブロムコハク酸イドミと酵素ペプシンを使って牛血清アルブミン(BSA)のポリペプチドを切断し8種類のBSAフラグメントを単離した.いずれのフラグメントについても,N末端とC末端のアミノ酸分析を行い,親分子の一次構造上における位置を同定し,以下の検討を行った.備品として購入した高感度示差屈折計は小さいフラグメントの濃度決定に使用した. 各フラグメントの二次構造含量の変化は円偏光二色性測定により追跡した.BSAは非常に類似したドメインを3つ持つ.ドメインをそのまま含む形のフラグメントのαーヘリックス構造は,尿素と塩酸グアニジン変性に対してBSAのそれと同程度抵抗した.また,これらのフラグメントのαーヘリックス含量はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液中でBSAと同じように段階的に減少した.これらの結果は,BSAのドメイン間に相互作用がないこと,さらにBSAがドメイン単位で二次構造を保持する機能をもち,ドメイン単位で構造変化をすることを示している.一方,SーS架橋を還元切断したフラグメントは,上の変性剤溶液中で,同じくこの架橋をすべて還元切断したBSAと非常に類似した二次構造変化をした.これは,BSAがドメインサイズよりさらに小さい単位で同じようなアミノ酸の並びをもち,それらの部分が相互に似た二次構造をとるためと思われる. また,BSAおよびその3分の2をしめるフラグメントのコンフォ-メ-ション変化に伴いそれらの回転相関時間も変化することが,時間分解蛍光偏光解消の測定から明らかになった.平行して,尿素によって壊れたBSAの二次構造がSDSの添加によって復元される様子も初めて定量的に検討した.同様の検討をフラグメントについても行う予定である.
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