研究概要 |
1金属触媒を用いる有機不飽和化合物の固相水素化に関する研究を行った。金属触媒としてはニッケル微粉(標準粒経;20mm)、基質としてはマレイン酸ジナトリウム、フマル酸ジナトリウムを使用した。 1.固相水素化生成物の分析 〔標準的な実験方法〕ニッケル微粉と基質粉末を水素存在下に振とう撹拌する(水素圧;1.0kg/cm^2,30℃)→反応後,脱イオン水で水溶性物質を抽出する(60℃)→抽出物をエステル化する(→GLC分析)。 〔結果〕コハク酸ジナトリウムへの水素化は0.4mmol/gNiの段階で停止した。抽出を冷水で行うとコハク酸ジナトリウム生成量は0.3mmol/gNiに減少した。なお、基質としてマレイン酸ジナトリウムを用いた場合にはフマル酸ジナトリウムへの異性化(0.1mmol/gNiで停止)が副反応としておこなった。 2.ニッケル微粉の触媒毒による処理 水素化率が抽出温度に依存することから抽出段階で液相水素化がおこっている可能性が示唆された。そこで、水容性物質の抽出に先立ちニッケル微粉を触媒毒で処理した後、常法通り生成物の分析を行ったところ、コハク酸ジナトリウムの生成量は約0.04mmol/gNiとなった。 1.,2.の結果から標準的な実験で求められたコハク酸ジナトリウムの生成量の90%以上は液相水素化の結果であると結論された。なお、オートクレーブを使用しフマル酸ジナトリウムの高温・高圧における固相水素化を試みている(100kg/cm^2,60または100℃)が、いまだに再現性よく高い水素化率を得るには到っていない。今後、他の金属触媒による固相水素化についても検討したい。
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