研究概要 |
新規な有機半導体であるビス〔1,2,5〕チアジアゾロ-P-キノビス(1,3-ジチオール)(BTQBT)の各種誘導体ならびにその類似体を合成し、それらの物性を検討した。BTQBTのチアジアゾール環をピラジン環に換えた分子BPYQBTでは、分子内での1,3-ジチオール環の間の共役が強くなるために、ドナー性が増し、電導度が約1桁上昇した。さらに、BTQBTの分極を強めるために、1つの1,3-ジチオール環をカルボニル基に置換したBTQTを合成した。この分子はカラム構造をとっており、カラム間にS…S,S…N,S…Oの短いヘテロ原子接触が見られた。この結晶構造は、1,3-ジチオール環のS…S接触で特異なシート構造をしているBTQBTとは異なるものである。BTQTは1,3-ジチオール環からカルボニル基への分子内電荷移動のために、BTQBTより吸収が長波長シフトしている。物性では特異な電流-電圧特性が見られ、電圧を上げると電流値の急上昇が観測された。また、BTQBTの1つのチアジアゾール環をベンゼン環にしたTBQBTを合成した。この分子は、ベンゼン環のペリ位の水素の立体障害で非平面であるが、単一成分でBTQBTに匹敵する電導性を示した。ファン型の分子であるが、結晶状態でスタッキング方向にπ-軌道の重なりがよいためと考えられる。なお、TBQBTのジベンゾ体は良好な電導性の1:1カチオンラジカル塩を生成した。一方、バンドギャップの小さな導電性ポリマーとして、非古典的ヘテロペンタレンを構成単位として有するポリチオフェン誘導体を合成した。このポリマーは、0.9eVの小さなバンドギャップを示し、P-ドーピングもn-ドーピングも容易に行うことができた。さらに、分極率の大きい1,3-ジチオール環を有する新しいポリマーを合成し、約50Scm^<-1>の高い電導度を実現できた。このポリマーでは長鎖アルキル基の導入にも成功している。
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