生体系ではプロトン勾配エネルギ-を化学エネルギ-へ変換してATP合成などエネルギ-的に不利な反応が起こめことを可能にしている。これまで人工的にプロトン勾配エネルギ-を化学エネルギ-へ変換する試みはすべて水溶液で膜システムを用いて行われてきたが、成功した場合でもその効率は極めて悪いものであった。本研究では非水溶液、特にアセトニトリルのような極性アプロチック溶媒を用いて、プロトン勾配エネルギ-の化学エネルギ-への高効率な変換反応システムを構築することができた。アセトニトリル(McCN)溶媒とすると、どのような膜の用いるかが問題となるが、本研究ではアセトニトリルと混ざらない二硫化炭素を用いて液膜を構成し、以下の電子伝達系を構築した。 (1)McCN(I)/CS_2(II)/MeCN(III)よりなる液膜系を用いると、フェロセン類を電子キャリヤ-として相Iから相IIIへの電子伝達に伴い、プロトン勾配が効率良く形成されることを見出した。すなわち、相II(CS_2)はプロトンの良好なインシュレ-タ-として機能する。 (2)MeCN中キノン類(Q)はOH^-が存在すると一電子還元されることを見出した。生成物分析および速度論的検討によりその反応機構をめらかにした。また、MeCN(I)/CS_2(II)/MeCN(III)よりなる液膜系を用い、プロトン勾配を利用すると、相Iで生成したQ^-・から相I(CS_2)に溶解するCoTPP(TPPH_2=テトラフェニルポルフィリン)を電子キャリヤ-として、相III(MeCN)の酸素分子への吸エルゴン的な電子伝達が効率良く起こることを見出した。 (3)MeCN中ヒドロキノン類(QH_2)はOH^-が存在すると強力な還元剤であるジアニオン(Q^<2->)が生成する。MeCN(I)/CS_2(II)/MeCN(III)よりなる液膜系を用い、プロトン勾配を利用すると、相Iで生成したQ^<2->から相II(CS_2)に溶解するCoTPP(TPPH_2=テトラフェニルポルフィリン)を電子キャリヤ-として、相III(MeCN)のキノン類への吸エルゴン的な電子伝達が効率良く起こることを見出した。
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