研究概要 |
研究課題について萌芽的研究を行なったので報告する。酸化物中最も融点の高いトリア(ThO_2)に酸素空孔を作る目的でイットリア,カルシア,マグネシアをそれぞれ加え、更にそれらの電子伝導度を増大させる目的で二つの価数を取り得る元素の酸化物:チタニアとセリアをそれぞれ加えた混合粉体を1400℃で5時間アルミナ坩堝中で固相反応させた。Xー線回折の結果ThO_2ーY_2O_3ーCeO_2は反応が不十分であり、ThO_2ーY_2O_3ーTiO_2は二相であった。ThO_2ーCaOーCeO_2及びThO_2ーCaOーTiO_2は固相反応はするが坩堝と反応する。ThO_2ーMgOーCeO_2及びThO_2ーMgOーTiO_2は坩堝と反応せず又固相反応も十分に行なわれた。今回は[(ThO_2)_<1-X>(CeO_2)_X]_<0.9>(MgO)_<0.1>の試料の酸素透過率を測定した。試料作成は粉体で固相反応の後、乳鉢で5時間粉砕し、水プレスの後1400℃で12時間焼結を行ない、厚さ2.5×φ15mmに成形した。試料は白金パッキングを介してφ13×9mmのアルミナパイプに高温で圧着し、温度に対する酸素透過率を調べた。セリアの量と共に酸素透過率は増大する。以前に測定した[(ZrO_2)_<1ーX>(CeO_2)_X]_<0.9>(Y_2O_3)_<0.1>(CeーYSZ)の酸素透過率と比較して遜色のないことが分かった。白金パッキングによる部分短絡現象を含んだデ-タではあるが、電子の活性化エネルギ-は約1.9eVである。これはCeーYSZの値よりも小さい。最近当研究室で白金パッキングによる部分短絡現象を取除く測定法を開発したので、今後この方法によりThO_2ーMgOーCeO_2,ThO_2ーMgOーTiO_2,ThO_2ーCaOーCeO_2及びThO_2ーCaOーTiO_2の精確な酸素透過率を温度に対して測定し、またこれらの物質の熱衝撃等をも調べ太陽エネルギ-を利用して水の熱分解から水素を製造するための高融点高効率の酸素透過膜に関する知見を得たいと考えている。
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