研究概要 |
微生物の材料プロセス機能を利用した微細加工技術を開発するためのシーズ的基礎研究として,海洋微生物の金属材料に対する腐食作用について一般的調査を行い,これに基づいて微生物加工の可能性について検討した。この結果,以下のような知見および成果を得た。 1。海洋微生物腐食の一般的特徴に関する検討 (1)各種金属材料に対して指向的に微生物が集合し,表面腐食層および腐食生成物中に多数の細菌が生息することが分った。 (2)無酸素銅板の腐食に対する微生物の効果として,好気性細菌の活動による水和反応の促進,嫌気性細菌の活動による腐食ピットの生成および酸素濃淡環境の生成による腐食の促進が挙げられた。 (3)キルド鋼板に対して,微生物は結晶粒内を選択的に腐食すること,および腐食量を著しく助長することが分った。 2。微生物加工の試み (1)人工的に加工対象領域を嫌気性環境とし,嫌気性細菌の活動により金属表面に凹パターンを刻印する手法(MBM凹加工)の原理を提示し,その妥当性を無酸素銅板を用いて立証した。 (2)すきま腐食と微生物腐食の複合作用を活用して,金属表面に凸パターンを刻印する手法(MBM凸加工)の原理を考案し,なお不鮮明ながら無酸素銅板に英文字を描くことができた。 (3)微生物処理を施した無酸素銅基板上に金属結晶体を着床・成長させる手法(MBDプロセス)を提出し,その有効性を確かめた。 このようにして,微生物加工開発の手掛りを得たので,これらの成果を日本機械学会東海支部講演会(平成4年7月)にて発表した。また,平成5年8月に開催される国際セミナーIMMM′93(三重)において発表する予定である。
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