研究概要 |
従来,超音波の音速変化,減衰特性,周波数スペクトルの変化に注目した非破壊評価手法が種々検討されてきているが,これらの手法は,信号レベルの低い初期材料劣化の評価には適さない。一方,電磁計測の材料劣化への応用をめざした研究の歴史は極めて浅い。 本研究では,広い周波数範囲の交流電流を用い,透磁率,電気伝導率に加え,(透磁率/電気伝導率)^<1/2>という交流電流下の表面電位分布を求める問題を対象に,近年,本研究代表者らが発見した電場と磁場を総合する電磁パラメータ(γと呼ぶ)に着目し,電磁計測を応用した初期材料劣化・微小分布欠陥の評価のための基礎について検討した。交流電位差法を用いて材料表面薄肉層の肉厚および電磁物性値を計測・評価する手法の基礎を開発し,その有効性を検証した。得られた成果を以下にまとめて示す。 1.メッキ材をモデル化した表面層と内部で電磁物性値が異なる二層構造円筒導体の長手軸方向に一様に交流電流が流れる問題について,表面層および内部の理論電界を解析し,部材表面上における理論電位差を求めた。さらに計測用配線に生じる誘導起電力の影響を考慮し,同理論解を修正した。 2.ハードクロムメッキを施した二層構造円筒試験片に対する部材表面上の電位差を測定し,電位差と周波数の関係を求めた。 3.メッキ層の厚さ,電磁物性値に加え,誘導起電力をも未知量として扱い,1.で求めた理論解を2.の計測結果と照合することによりこれらの未知量を評価するという逆問題解析手法を考案した。 4.3の逆問題解析手法によりメッキ層の厚さおよび電磁物性値を評価し,本手法の妥当性を示した。
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