研究概要 |
超潤滑を実験で実証するための基礎研究として,平成3年度では見かけの接触面積が摩擦係数に及ぼす影響を調べる目的で,物体のすベり初めを正確に把握することができる顕微傾斜装置を用いて,ニッケル平板上で金属平板をすべらせて得られる最大静止摩擦係数とアルミニウムの見かけの接触面積との関連を検討し,次のことがわかった。 (1)最大静摩擦係数μは見かけの接触面積Aが小さい程大きくなる。(2)見かけの接触面積が同一である場合,最大静摩擦係数μは見かけの接触面積の外周長さRに比例して増大する。(3)空気中での乾燥摩擦において,接触圧力,表面あらさ,雰囲気条件(温度,湿度),表面の清浄度が一定であれば,A_0以下の見かけの接触面積におけるμの値はAとRから決めることができる。なお,A_0はμの値がAに関係しないμ_0を示す限界の接触面積であり,A_0以上の接触面積ではアモントン・クーロンの法則にしたがう。 ボールや転がりを利用する転がり摩擦はすベり摩擦に比ベて摩擦係数が極めて小さい。粒子係数が1〜10nmであるダイヤモンド超微粒子の転がりを利用すれば,摩擦の軽減が期待でき,超潤滑を実験的に実証できる。 そこで,平成4年度ではクラスタダイヤモンドを分散してアルミニウム基複合材についてすべり摩擦をおこない,次のことがわかった。 (1)摩擦係数はダイヤモンドが多いほど小さい。(2)同一のダイヤモンド含有量では真空中の摩擦係数は空気中より大きい。(3)鋼球と複合材の組合せでは,ダイヤモンドを10%含む複合材の空気中における摩擦係数は極めて小さく,0.04である。
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