研究概要 |
本研究によって,互いに混ざり合わない二つの液体の水平な液ー液界面に気体噴流を垂直に接近させるとき形成される中空液滴を効果的に活用して,従来用いられている方法とは全く異なる球殻生成システムを確立した。すなわち,溶融塩を用いた中空液滴生成槽を試作し,その一部を強制冷却し,高温融体の流動場ならびに温度場制御によって中空液滴を連続的に凝固させながら,従来実現が困難であった比較的大きな固体球殻を生成させた。さらに,高温融体の凝固界面の成長時間と圧力,流量,温度などの計測結果の統計評価から,この種の連続球殻生成に関与する基本的な流体力学上の制御要因を理論および実験の両面から解明した。さらに,球殻生成法の最適化を計るために,装置内の温度・圧力を変化させた時の試験部における高温融体の流量,圧力,温度などを実測し,高温融体の凝固流動制御に必要な基礎デ-タを蓄積した。また,中空液滴の流動特性および熱伝達特性を明らかにするため,支配方程式の導出ならびに数値シュミレ-ション手法の開発を行い,ス-パ-コンピュ-タを用いてこれらの解析を行った。すなわち,中空液滴の周囲の液体,液滴を構成する液体および内部の気体の三つの流体に対して質量,運動量およびエネルギ-の保存を表す偏微分方程式を境界問題として数値的に解き,同心球形状の中空液滴に対し,その運動ならびに熱伝達特性のシュミレ-ションを行った。以上の研究成果を総括し,本研究によって開発された液ー液ー気系生成槽を利用すれば大量の球殻の連続生成が可能であることを具体的に明らかにした。これらの成果は新素材の製造技術の進展に寄与するものと信ずる。
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