研究概要 |
振動的に変化する化学反応系,生物の睡眠・覚醒に関連したサーカディアン(概日性)リズム,神経回路モデルの振動パタンなどのマクロな挙動は,非線形振動子として記述される.本研究は,これらの分野で観察された振動に対する発振器回路のモデルを作制し,このモデルにみられる種々の非線形現象を解析することにより,もとの化学・生物系の挙動をより深く検討することにある. 本年度は3年目に当たり,前々年度・前年度の研究成果に基づき,化学反応系,サーカディアンリズムの数学モデルの解析を行った. 1.塩水・真水振動系,B-Z反応系が複数個結合した反応系など結合発振器の数学モデルを解析した.結合方式の違いが,同相または逆相で同期する現象の機構とどう関係しているかを検討した.また,結合方式と非線形特性の違いによって,N相あるいは準周期振動が同期すること理論的に考察した.これらの条件を分岐理論を用いて解析する問題は今後の課題となった. 2.人のサーカディアンリズムの研究はKronauer等による2-振動子モデル,Daan等による1-振動子モデルなどがある.どちらのモデルについても,各種の同期現象,カオス的振動がみられる.これらの発生機構を解明するため分岐理論を適用した解析を行なった. 3.昨年度に引き続き,環状あるいは線状に結合した神経回路モデルの振動パタン移動現象が各振動子間の相互作用とどのように関係しているか分岐理論を用いて解析した. 4.研究全体を総括し,報告書を作成した.
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