研究概要 |
本研究の目的は,土質柱状図の客観的なモデル化手法を開発し,そのモデルに基づいて地盤堆積構造の類似性あるいは複雑性を評価することである.そして,地盤の複雑さを考慮した工学的問題の解決の方向性を探求することである.土質柱状図のモデル化手法としては,(1)深度方向への地層の繰り返しにマルコフ連鎖を適用する方法と(2)横方向への地層の連続性に着目する方法を提案している.前者の方法では,「パラメータ空間」を深度とし,「状態空間」として土質名やN値を考慮している.この両空間さえ決めておけば,1本の土質柱状図が推移回数行列(確率行列)によって一意的に表現できる.そして,マルコフ連鎖の理論に基づき,種々の特性量が計算でき,土質柱状図が数量的に表現できることになる.更に,赤池情報量規準によれば,推移回数行列の比較が可能となり,2本以上の土質柱状図の推移回数行列が同一の母集団からのサンプルと見なしてよいかどうかの判定ができる.このことは,一地域内で得られた土質柱状図の比較ができることを示しており,狭い地域げ実施された15本の土質柱状図ならびに「最新名古屋地盤図データベース」に掲載されている26本の土質柱状図の解析を実施した. こうしたマルコフ連鎖に基づく土質柱状図のモデル化手法を工学的に利用する方向として,杭の支持力算定問題を考えている.現行法による杭の許容支持力とモデル化した土質柱状図に対する許容支持力を比較した結果,6%以内の相違しかなく,比較的良好な結果を得た.今後,地盤の複雑さを考慮した杭の支持力算定方法を考えていきたい.以上の成果は土木学会ならびに土質工学会に報告している. モデル化手法(2)については,2本の土質柱状図の状態を横方向に比較する方法であり,比較的簡単に地盤の成層性がモデル化できる.現在詳細な検討を実施中である.
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