研究概要 |
微量環境汚染物質として重要な有機ハロゲン化合物の一つである2-クロロアクリル酸(CAA)や,難分解性物質の1つであるアゾ染料をおもな対象として,それらを資化,分解する菌あるいは菌体酵素について検討を加え,以下の成果を得た。 2-クロロアクリル酸資化性菌については,各種上壌中から3種の菌を単離し,いずれもPseudmonas属に属することを確認した。これらの菌のうちの1種について抽出液を精製し,そのデハロゲナーゼの特性を調べたところ,分子量は約50,000であること,炭素数3以下の基質に対しては活性が高いことなどが判明した。また,上記のデハロゲナーゼ遺伝子を大腸菌にクローニングし,最終的に,脱ハロゲン活性を示すクローン株を1株得た。(なお,この研究については,京都大学化学研究所左右田健次教授の指導をも得て行ったものである。) また,難分解性物質であるアゾ染料のうちのReactire Red Bにつき,その分解微生物と脱色にかかわる条件について検討を加えた。アゾ染料やグルコース等からなる人工廃水で長期間培養した汚泥からは11種の菌が単離できた。これらの菌は全てグラム陰性菌であり,ほとんどが桿菌と認められた。また,それぞれ脱色能力が異なり,脱色能力が強い菌ほどグルコース資化能力も強い傾向があった。培養汚泥及び単離菌による脱色では,ORP値が低いほど脱色速度が速く,エネルギー源としてグルコースや蔗糖等の易分解性物質が必要であることから,脱色は共役代謝による還元反応によって進むこと,Reactive Red Bの脱色にかかわる菌はReactive Red B以外のアゾ染料の脱色にも有効であることがわかった。
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