研究概要 |
本研究は高分解能電子顕微鏡をもちいて、定量的統計処理性に富む回折コントラスト像で、極微小点欠陥集合体(〜Inm)の観察・解析方法を開発することを目的として、平成3ー4年度の2カ年に渡って行われた。得られた知見は以下の通りである。 種々の方法で導入した微小点欠陥集合体の、高分解能電子顕微鏡を用いた回折コントラスト像の観察を行った。格子間原子型転位ループの場合1nm以下のイメージも観察できた。微小な点欠陥集合体が混在している系を解析する方法としてg=220の反射を用いる方法が提唱された。これを用いると、2nm以下の積層欠陥四面体と格子間原子型転位ループを識別できることが明らかになった。 積層欠陥四面体はイメージとして金の場合で0.6nm,ニッケルで0.5nmのものまで観察できた。これらは原子3個からなる最小の積層欠陥四面体に対応する。マルチスライス法を用いた弱ビ一ム像の計算結果によると(110)面から観察してもこれらは三角形には観察できない。三角形として観察可能なのは最低10個以上の原子からなる積層欠陥四面体であることが明かになった。ボイドは2nm以上の場合、ボイドコントラストによりボイドと断定できる。それ以下の場合、転位ループと区別するために、ボイドのもつ等方的歪場により、像が消える回折条件が存在しないことからボイドと判定する方法を提案した。 以上の微小点欠陥集合体の解析方法を利用した成果は、高速中性子による金属材料の照射損傷発達過程を解析した論文として10編、イオン照射により導入された欠陥を解析した論文として2編、結晶中に成長時に導入された欠陥を解析二した論文として1編、種々の機械加工による構造変化を解析した論文として1編、が公表された。
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